“僕が通り抜けてきたすべての音楽の原形がここにある。-青木智仁”
青木智仁がガイドするクロスオーバー・ミュージックの真髄!!
青木智仁 presents
"ベーシック・クロスオーバー" CTI/KUDU プライベート・セレクション/V.A.
Tomohito Aoki presents
"Bassic Crossover" CTI/KUDU Private selection/V.A.
Label:Roving Spirits CD品番:RKCJ-4005
POS:4544873 04005 4 発売日:2003.6.12
税込価格\2,500 税抜価格\2,381
発売会社:有限会社ローヴィング・スピリッツ 販売会社:
スリーディーシステム株式会社 株式会社プライエイド・レコーズ


9月23日(火・祝) 六本木STB139にて "ベーシック・クロスオーバー"発売記念ライヴが行われました。
当CD に収録されている殆どの楽曲と70年代のクロスオーバー&ファンク・ミュージックをカヴァーするという一夜限りの企画ライブ。
客席一同大盛り上がりの一夜となりました。沢山の方々のご来場、ありがとうございました。

出演:青木智仁(B) Tina(vo) 本田雅人(Sax) 梶原順(G) 小倉泰治(Key)  村石雅行(Ds) 金子隆博(Sax) 小林正弘(tp)
《ADLIB》誌 読者人気投票/国内ベーシスト部門1位に9年連続君臨する青木智仁。ボトムを支え続け、音楽のBASE=基礎を知り尽くしたスーパー・ベース・プレイヤーが、70年代音楽シーンに革命を起こし、自らそのフリークでもある名門CTI/KUDUレーベルの中からコンパイルしたプライベート・セレクション。青木ファンにアピールするファンキーでグルーヴィーなクロスオーバー・サウンド、その真髄が「 BASSIC CROSSOVER」だ。
■収録曲■
1. Star Fire aka The Saddest Thing / Joe Beck 4:32
2. What a Diff'rence a Day Makes / Esther Phillips 4:27
3. Workin' On a Groovy Thing / Johnny Hammond 6:34
4. Children's Game / Antonio Carlos Jobim 3:25
5. Dindi / Eric Gale 7:14
6. Midnight Woman / Lalo Schifrin 6:02
7. Amparo / Antonio Carlos Jobim 3:40
8. Double Steal / Fuse One 6:24
9. That's Enough For Me / Patti Austin 5:46
10. Funk In Deep Freeze / Chet Baker 6:06
11. In the Wee Small Hours Of The Morning
/ Hank Crawford 2:50
12. I Wanted It Too / Phil Upchurch 2:43
13. Super Strut / Deodato 8:53
14. Skylark / Paul Desmond 5:14

【Credit】
Compiled by Tomohito Aoki
Remastered by Kazuhiro Yamagata (CD design Masterring)
Designed by Nobuya Okamura

Under the licensed from King Records Co.,Ltd.
(P)2003 Roving Spirits Co.,Ltd.
【参加ミュージシャン】

1. Star Fire aka The Saddest Thing / Joe Beck (Joe Beck)
Joe Beck(g), David Sanborn(as), Don Grolnick(el-p), Will Lee(el-b), Chris Parker(ds) and others

2. What a Diff'rence a Day Makes / Esther Phillips (Adam / Grever)
Esther Phillips(vo), Joe Beck(g, arr), Michael Brecker(ts), Jon Faddis(tp), Randy Brecker(tp), Don Grolnick(key), Steve Khan(g), David Sanborn(as), Will Lee(el-b), Chris Parker(ds), Ralph MacDonald(per)

3. Workin' On a Groovy Thing / Johnny Hammond (Rodger Atkins, Neil Sedaka)
Johnny Hammond(org), Danny Moore(tp), Hank Crawford(as), Grover Washington Jr.(ts), Eric Gale(g), Johnny Williams(b), Billy Cobham(ds), Airto Moreira(per)

4. Children's Game / Antonio Carlos Jobim (Antonio Carlos Jobim)
Antonio Carlos Jobim(p, whistle), Eumir Deodato(g, arr), Hubert Laws(fl), Urbie Green(tb), Ron Carter(b), Joao Palma(ds), Airto Moreira(per), Everaldo Ferreira(per)

5. Dindi / Eric Gale (Antonio Carlos Jobim)
Eric Gale(g), Bob James(key, syn, arr), Gordon Edwards(b), Rick Marotta(ds), Ralph MacDonald(per) and Horns, Strings

6. Midnight Woman / Lalo Schifrin (Lalo Schifrin)
Lalo Schifrin(key), Burt Collins(tp), John Frosk(tp), John Gatchell(tp), Urbie Green(tb), Joe Farrell(fl), Eric Gale(g), Will Lee(b), Steve Gadd(ds), Ralph MacDonald(per) with Strings

7. Amparo / Antonio Carlos Jobim (Antonio Carlos Jobim)
Antonio Carlos Jobim(p, el-p), Hubert Laws(fl), Urbie Green(tb), Ron Carter(b), Joao Palma(ds), Airto Moreira(per), Everaldo Ferreira(per), Eumir Deodato(arr)

8. Double Steal / Fuse One (Jeremy Wall)
Joe Farrell(ts), Larry Coryell(g), Jeremy Wall(p, syn), Ronnie Foster(key, syn), Will Lee(b), Ndugu Leon Chancler(ds), Paulinho DaCosta(per)

9. That's Enough For Me / Patti Austin (Dave Grusin, Patti Austin)
Patti Austin(vo), Dave Grusin(key), Eric Gale(g), Will Lee(b), Steve Jordan(ds)

10. Funk In Deep Freeze / Chet Baker (Hank Mobley)
Chet Baker(tp), Bob James(el-p), Ron Carter(b), Steve Gadd(ds)

11. In the Wee Small Hours Of The Morning / Hank Crawford (Bob Hillard / David Mann)
Hank Crawford(as), Richard Tee(org), Ron Carter(el-b), Bernard Purdie(ds), Don Sebesky(arr)

12. I Wanted It Too / Phil Upchurch/Tennyson Stephens ()
Phil Upchurch(g), Tennyson Stephens(p, vo), David Sanborn(as), Eric Gale(g), Bob James(key), Doug Bascomb(b), Andrew Smith(ds)

13. Super Strut / Deodato (Eumir Deodato)
Eumir Deodato(key, arr), John Tropea(g), John Giulino(b), Billy Cobham(ds), Rubens Bassini(per), Gilmore Degap(per) with Horns & Strings

14. Skylark / Paul Desmond (H. Carmichael, J. Mercer)
Paul Desmond(as), Gene Bertoncini(g), Bob James(p), Ron Carter(b), Jack DeJohnette(ds)
〜青木智仁/TOMOHITO AOKI プロフィール〜
神奈川県生まれ。14才でギターをはじめ、16才でベースに転向する。美術学校卒業後、角松敏生(vo,g)のサポートとしてプロ活動を始め、'82年からのツアーはもとより殆どのアルバムに参加し現在も活動を共にしている。1989年には角松敏生プロデュースによる初のソロ作「DOUBLE FACE」を発表。2000年には2nd作「EXPERIENCE」を発表し、音楽誌《ADLIB》の“2000年ポピュラー・ディスク大賞/Japanese Fusion Prize”を受賞。なお、同誌“読者人気投票/国内ベーシスト部門”では、2002年の時点で9年連続、12回、第1位に選出されている。またスター・プレイヤー4人が集結した究極のバンド、FOUR OF A KINDでアルバム「FOUR OF A KIND」を2002年1月に発表した。

■ 主要アルバム
「DOUBLE FACE/青木智仁」(BMGファンハウス M32D-1004/1989年)
「EXPERIENCE/青木智仁」(ビクターエンタテインメント VICJ-60646/2000年)
「FOUR OF A KIND/FOUR OF A KIND」(ビクターエンタテインメント VICJ-60886/2002年)
*ライナーノーツ
対談
青木智仁×松下佳男ADLIB》編集長 

松下:まずは青木さんのCTIKUDUレーベルとの出会いから教えてください。

青木:確か1973年か74年ぐらいにデオダートの〈Rhapsody In Blue〉をラジオで聴いたのが最初だったと思います。とにかく衝撃を受けて、レコード屋さんに行ったらクロスオーバーというコーナーがありまして、なんとそのシングル盤があったんです。B面は今回収録している〈Super Strut〉。当時はディープ・パープルやレッド・ツェッペリンが全盛だったんですが、デオダートのハードロックとは違う音楽性に惹かれたんです。その時はサウンドにあるジャズ的なエッセンスまでは理解していませんでしたが、テクニカルなものへの憧れもあったし、まぁ僕がヒネていたのもあるでしょうけど(笑)。あの頃コピーしたのもタワー・オブ・パワーやCTIKUDUものと周囲とは違いましたからね。

松下:デオダートはジョージ・ガーシュインの名曲〈Rhapsody In Blue〉を見事にアレンジしていましたね。

青木:ホント、見事でした。そこからストレート・アヘッドなジャズも聴くようになって、平行してクロスオーバー・サウンド、R&B etcと広げていったんです。あの頃はジャンルなど考えずに、スポンジみたいになんでも音楽を吸収していました。そうしてゆく中で、これも今回収録した僕が大好きなエスター・フィリップスの〈What a Diff’rence a Day Makes〉にも出会いましたし。余談ですが19歳の時に一応僕がリーダーとなってバンドを作りまして、そのバンド名を“スーパー・ストラット”にしまして…。今も角松君を一緒にサポートしている田中倫明(perc)もメンバーだったんですが、当時の湘南界隈ではそれなりにブイブイいわせたバンドでした。僕は文字通りCTIKUDUにどっぷりつかっていたんですが、サウンドだけではなくピート・ターナーによるアートワークも魅力的でしたね。お金をためてコツコツとアルバムを買っていったのを思い出します。

松下CTIKUDUのサウンドのキーワードとしてリスナーを限定しない“聴きやすさ”があると思いますが、マントバーニやポール・モーリアといったいわゆるイージー・リスリングとは違った洗練さ、音楽的深さがありましたよね。やはりそれはレーベル・プロデューサーのクリード・テイラーの存在が大きい。

青木:まさにクリード・テイラーの功績でしょう。当時CTIKUDUの作品はゴリゴリのジャズ・ファンからはシャリコマ的だ”(コマーシャリズムの俗語)と軽視されていたとんでもない風潮がありました。でも伝統的ジャズ奏者のロン・カーターがCTIKUDUからアルバムをリリースしたのも(「ALL BLUES73年/「ANYTHING GOES75年)、レーベル・ポリシーに賛同したからこそでしょう。この時の彼のベース・サウンドはアップ・ライトでありながらエレクトリック・ベースよりもドライヴしていますよ。今聴くとあらためてこのレーベルの音楽性に驚きます。

松下:ロン・カーターは当時ブルーノートを初めとする名門ジャズ・レーベルで伝統的ジャズをプレイしていたわけですが、“とにかく好きなことをやってくれ”とクリード・テイラーから声を掛けられ、ミュージシャンとしてのクリエイティヴィティを強く刺激されCTIKUDUに加わったそうです。

青木:その辺りが時代の波と共に僕たちのパルスにバッチリ合ったんでしょう。

松下:クリード・テイラーにインタビューした際に彼がクロスオーバーについて、単にロックやR&B、ジャズといったジャンルではなく聴き手をクロスオーバーさせることが狙いだとコメントしていました。ハンク・クロフォードの曲がジャズ・チャートだけでなく同時にR&Bのチャートに、デオダートの〈ツァラトゥストラはかく語りき〉もジャズとロックの両チャートにランク・インしたんですが、これこそクリードが目指したことだった。以前ラリー・カールトンが“僕は日本ではフュージョン・ギタリストと呼ばれているけど、単なるギタリストさ”と語っていたんですがその発想こそCTIKUDUの理念だったんでしょう。それとCTIKUDUの作品には後のスター・プレイヤーが大挙参加していますね、グローバー・ワシントンJrCTIから巣立っていったわけです。その辺りも伺いたいのですが。

青木:僕らミュージシャンの言葉でバックでサポートをすることを“兵隊”と言うんですが、CTIKUDUは素晴らしい兵隊の集まりでした。デイヴィッド・サンボーン(sax)、またスティーヴ・ガッド(ds)、エリック・ゲイル(g)をなどスタッフのメンバー等も素晴らしい仕事をしています。CTIKUDUなくしてスタッフは存在しなかったのではないかと思えるぐらいに。

松下:往年のモータウンをジェームス・ジェマーソン(b)やバーナード・パーディ(ds)らが自転車操業的に支えていたのと近いものがありますね。それとボブ・ジェームス(kyd)やドン・セベスキー(arr)といった才能をフレキシブルにレーベルに取り込んでいったことも見逃せないでしょう。

青木:オープンマインドなクリード・テイラーとその人脈の広さににはつくづく驚かされます。サポート・ミュージシャンが見事な働きをして、ゲイルがソロ作をリリースするなどバック・ミュージシャンにもスポットを当てる。これもクリード・テイラーの秀逸なプロデュース力ですね。角松君が僕をプロデュースしたのも(「DOUBLE FACE/青木智仁」89年)同じスタンスだったと思うんです。

松下:振り返れば30年前のサウンドですが、現在聴いてみて率直にどう感じましたか?

青木:今回この「BASSIC CROSSOVER」のお話をいただいたからなんですが、これだけ集中して聴いてみて、音楽的な完成度の高さには驚きました。僕も音楽を職業にして何十年か経ちますが、今の耳で聴くと当時以上にそれを感じますね。先ほども言いましたがあの頃の“シャリコマ的だ”という声は一体何だったのか、と思えてならないです。加えて、作り手が面白がっているのがよくわかるんです。テクノロジーのないあの時代にこれだけのサウンドを作り上げるのは並大抵の労力ではなかったことは想像に難くないですが、ミュージシャン、エンジニア、プロデューサーが一体となってより高いレベルのものを作ろうという意欲に溢れているんです。現在はコンピューターによって何でも出来てしまいますが、そういう環境の中にいる若い世代の人たちにも聴いて欲しいですね、この血の通った音楽を。

松下:まさに人間が生み出した音楽、それがCTIKUDUの音ですから。

青木:よく聴いてみると危なかしかったりするとこもあるんです。例えば〈Super Strut〉でディストーション、当時はファズと呼んでいましたがジョン・トロペイ(g)が踏み損なっていたり、ある曲のベースでサビに入れないのがわかったり(笑)、まぁそれは僕が職業上わかることですけども。でも重ねて言いますが30年前にこのクオリティに達していることはとんでもないことなんです。日本の多くのミュージシャンもCTIKUDUから大きな影響を受けてますね。

松下:今回の選曲はどのように進められたのですか?

青木:自分が何度でも聴きたい楽曲、という基準で選びました。僕がベーシストであるということよりも一人のリスナーという立場に重きを置きましたね。ベースが入っていない曲すらありますので(笑)。14曲を収めたわけですが、漏れてしまった楽曲も多数ありまして、その選択にはやはり苦労しました。音を聴いて収録を決意しても、その曲の時間を見て断念したり…。コンピには付き物の話ですが。

松下:それと曲順が素晴らしいですね。選曲はもちろんですが曲順もコンピレーションの完成度を左右する重要な要素です。流れがイイ! 楽曲への愛情も滲み出ていますよ。

青木:ありがとうございます。クロスオーバー/フュージョンの王道であるジョー・ベック(g)をトップにしたかったのでまず〈Star Fire aka The Saddest Thing〉を。次は一転エスター・フィリップスのヴォーカル・チューン〈What a Diff’rence a Day Makes〉。1曲目と2曲目は実はバックのメンバーがほぼ同じなのでその辺りを意識して聴いていただいても面白いかと。掻い摘んで言いますが、流れていってアントニオ・カルロス・ジョビンのブラジリアン・チューン?どフュージョンのフューズ・ワン、パティ・オースティンの名曲?など初めて聴いていただく方にも通して聴いていただくことを意識して配置しました。ツアーなどの旅先でデモでこの順番通りに並べて何度も聴いてみましたが、スムースに流れていると思います。

松下:ご承知のとおり現在音楽業界は逆風にさらされています。クリエイティヴな作品が主流から減っている、と同時に若い世代を中心に音楽を本当に求める聴き手の数も激減しているという危機的状況。またコンピレーションに関して言えばあらゆるものが市場には溢れています。でも中にはベスト・ヒット的な短絡的なものも多いですよね。僕はこんな時代だからこそ、リスナーにはいろんな音楽、普遍的価値のある音楽に触れて欲しいと思うんです。ジャズ界にはブルーノート、プレスティッジ、リバーサイドといった普遍的レーベルがありますが、あと何十年後かにはCTIKUDUもその域に達すると僕は思うんです。その普遍的サウンドを絶妙にコンパイルしたのがこの「BASSIC CROSSOVER」であると。

青木:そう言っていただけるとうれしいですね。CTIKUDU、それを僕なりに集約したこのコンピレーションには、僕が通り抜けてきたすべての音楽の原型がここにある、と言っても過言ではないです。何度聴いても色褪せないこの楽曲の素晴らしさを是非とも感じていただければ。

松下:まさしく! 本日はどうもありがとうございました。

                ●文:音楽誌《ADLIB》編集長 松下佳男

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