嶋津健一
DISCOGRAPHY
ザ・コンポーザーズ U The Composers II - Kenichi Himself & Johnny Mndel 発売日:2010.4.21 |
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前作『The Composers I』(RKCJ-2041)のルグラン曲と対をなすこのアルバムは、 |
Roving Spirits CD品番:RKCJ-2044 POS:4544873 02044 5 税込価格\2,500 税抜価格\2,381 販売会社:バウンディ株式会社 |
【メンバー】 嶋津健一 (piano) Kenichi Shimazu 加藤真一 (bass) Shinichi Kato 岡田佳大 (drums) Keita Okada |
【収録曲】 |
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【Credit】 Produced by Masahiro Tomitani冨谷正博 Recorded & Mixed by Mas Anai穴井正和 Assistant Engineer : Akihiro Tabuchi 田淵章宏 Recorded at Wonder Station, Tokyo 2009年6月7日 Mixed at Cosmic Factory コスミック・ファクトリー Mastered by Kazuie Sugimoto (JVC Mastering Center) 杉本一家 Designed by Banana Spirits |
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【ライナーノーツ】 村井康司 (掲載してません。CD封入の解説書をお読み下さい。) 【オリジナル曲説明−嶋津健一】 The Moment I Feel You Inside My Mind 「恋」「あこがれ」が「愛」に変わり、自分の中で相手の存在が確かな重みを持った時押し寄せる様々な感情、「熱情」「喜び」「不安」……「悲しみ」や「怒り」をも内包した感情の複雑なからみ合いを表現した曲。 Young and Restless 思い切って若い頃の自分自身に成りきって作ってみた曲。ちょっと才気走ったところや、粋なテンションノートが鼻につくところも、自分自身のパロディと思うとほほえましく思える(のは多分私だけでしょう(笑))。 Grief and Relief どんな絶望の後にも必ず救いがあることを、表現した曲。実は曲冒頭のモチーフは、私自身のアドリブソロの中から取った(This Could Be〜 の8曲目「ひまわり」の 4分52秒あたり)。 Autumn 「秋」の、何とはなしにうら寂しい情景を表現した、というのは表の顔。実はこの曲サマータイムとコードチェンジがほとんど一緒です。サマータイムに“ちなんで”(after〜)、“After Summertime”すなわち“Autumn”です。 まっくろ家 兵庫県にあるフリースクール「まっくろくろすけ」(通称「まっくろけ」)を訪問した時、子供達の余りに子供らしい真っ直ぐな感受性に打たれ、その場で即興演奏した曲。録音してくれた人がいたので残ったけれど、そうでなければその場で消え去っていた。感謝… |
ザ・コンポーザーズ I The Composers I - Kenichi Himself & Michel Legrand 発売日:2009.10.21 |
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ミシェル・ルグランの代表曲と嶋津健一のオリジナル。 |
Roving Spirits CD品番:RKCJ-2041 POS:4544873 02041 4 税込価格\2,500 税抜価格\2,381 販売会社:バウンディ株式会社 |
【メンバー】 |
【収録曲】 |
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【Credit】 |
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【ライナーノーツ】 |
ニュー・コンセプト・オブ・ピアノ・トリオ This Could Be a Start Of Something Big 発売日:2006.4.19 |
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まさに職人技のピアノ・トリオ。 ツボにはまった演奏が、リスナーのジャズ魂を刺激する! |
Roving Spirits CD:RKCJ-2021 POS:4544873 02021 6 税込定価:\2,500 税抜定価:\2,381 販売会社:スリーディーシステム株式会社 株式会社プライエイド・レコーズ |
【メンバー】 嶋津健一 (piano) Kenichi Shimazu 加藤真一 (bass) Shinichi Kato 岡田佳大 (drums) Keita Okada |
【収録曲】 1. 黒い瞳 Dark Eyes (P.D.) 8:34 2. 飾りのついた四輪馬車 The Surry With The Fringe On Top (Richard Rodgers) 4:55 3. ブルー・アンド・センチメンタル Blue And Sentimental (Count Basie) 7:11 4. ジターバッグ・ワルツ Jitterbag Waltz (Thomas "Fats" Waller) 5:50 5. ブルーレディに赤い薔薇 Red Roses For Blue Lady (Roy Bennett/Sid Tepper) 7:36 6. トゥー・レイト・ナウ Too Late Now (Burton Lane/Alan Jay Lerner) 10:08 7. デヴィル・メイ・ケア Devil May Care (Bob Dorough/Terrell Kirk) 6:45 8. ひまわり Sunflower (Henry Mancini) 8:19 9. ムード・インディゴ Mood Indigo (Duke Ellington/Barney Bigard) 8:02 10. ジス・クッド・ビー・ア・スタート・オブ・サムシング・ビッグ This Could Be A Start Of Something Big (Steve Allen) 7:05 Total 74:58 |
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【Credit】 Produced by冨谷正博 Masahiro Tomitani Recorded & Mixed by 徳永陽一 Yoichi Tokunaga Recorded at BS &T, Tokyo 2005年6月5日 Mixed at オルガン坂スタジオ Organzaka Studio Mastered by 石橋 守 Mamoru Ishibashi (Sunrise Studio) Photo by 市川幸雄 Yukio Ichikawa Designed by Banana Spirits (P)&(C) 2006 Roving Spirits Co.,Ltd. |
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【ライナーノーツ】 中川ヨウ (掲載してません。CD封入の解説書をお読み下さい。) 【嶋津健一】 世の中には、昨日までそうしてきたというだけの理由で、今日もおなじことをする、また、人が皆そうしているというだけの理由で、自分も同じことをする、ということが、結構多いような気がします。今していることは、そうでなくても良いかも知れない、他のやり方は成立しないだろうか、そんな疑問を持った時、新しい方向が見えてくる時もあります。 ピアノ、ベース、ドラムスのスタンダードな編成のピアノ・トリオに関して、私が抱いた素朴な疑問を列挙してみます。 (1)バラードにドラム・ソロがないのはなぜだろう。 (2)ドラム・ソロをピアノやベースが伴奏してはいけないのだろうか。 (3)アドリブにおいては、常にひとりがソロイストで、他は伴奏者なのか。例えば、2人(もしくは3人)が対等な立場で、アドリブが同時進行してはいけないのか。 (4)バラードのソロは、どうして誰も彼もダブル・タイム・フィール(いわゆる倍テン)になるのだろう。 (5)なぜ、ソロの継ぎ目はああもはっきりわかるのだろう。例えば、ピアノ7、ドラム3が、ピアノ5、ドラム5となり、ピアノ3、ドラム7となって、ソロが入れ替わるのも可能じゃないのか。 私のトリオでは、これらの疑問点について、先入観なく取り組んできました。これは、実は結構しんどいことだったのです。それはなぜかというと。 (1)まず、自分の心から様々な先入観を取り去ることが必要。 (2)共演者から、全く予期しないメッセージが飛んで来ることに、常に心を開いていることが必要。 (3)そして何よりも、これからやろうとしていることに、過去のルーティンという裏付けがないため、瞬間瞬間に、その芸術的価値を自問自答し続けることが必要。 だからです。 今回のアルバムは、これらの疑問点とそれらへの解答について、考えを同じくする2人の鬼才を共演者として得たことから生まれました。加藤真一は、自らリーダーとしてB-HOT CREATIONSというグループを率いると同時に、佐藤允彦氏とのデュオをはじめとする、ユニークな活動を続けている異才ベーシスト。岡田佳大は、その天才ぶりがまだ充分に評価されていませんが、発想の柔軟さと、持っている芸術世界の広さは特筆に値し、私は「佳大をどれだけ生かし切るかが、バンド・リーダーとしての自分の実力」だと思っています。 まだまだグループとしては発展途上ですが、それでも確実なマイルストーンとなるアルバムが出来たと思っています。 |
オール・カインド・オブ・バラード〜ハーマン・フォスターに捧ぐ
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ジミー・スコットが、スコット・ハミルトンが信頼したShimazuのバラード・プレイ! 端麗なインタープレイ。嶋津健一が鳴らし、加藤真一が弾き、岡田佳大が叩いた。 限りなく優しく、力強い感情がほとばしるピアノトリオ。バラードの決定的名演が誕生! |
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Roving Spirits |
【メンバー】 |
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【収録曲】 |
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【Credit】 |
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【ライナーノーツ】 【僕がハーマンからもらったもの −嶋津健一】 僕が初めてハーマン・フォスターと出会ったのは、1985年8月NYマンハッタンのアップタウン、「West End Cafe」においてでした。 当時僕は25才、マンハッタン音楽院への留学のため、NYに着いてわずか2週間、それこそ右も左もわからない時でした。ルー・ドナルドソン・カルテットのピアニストとして聴いたハーマンの印象は、まさに天地がひっくり返るほどの衝撃でした。アップ・ビートに機関銃の様に入る左手を基調とするブロック・コード奏法、どこまでも甘い音色がからみついて来る様なバラード奏法。そして、何よりそのバックボーンとなるソウルの深さに、僕はただ口をぱっくり開けて、驚愕するしかなかったのでした。 そして、ハーマンとの個人的なつき合いが生れたのは、その年の12月、やはり「West End Cafe」においてだったのですが、これはハーマンが、仕事に大遅刻したことがきっかけだったのです。当時進取の思いに燃えていた僕は、無謀にもバンド・リーダーのルー・ドナルドソンに「オレに弾かせろ!」とかけ合ったのでした。答えは意外にも「Yes」。僕はNYのライブ・ハウス・デビューを果たすことが出来ました。そして何にも増して嬉しかったのは、僕の演奏中にハーマンが入って来て、僕のピアノを聴いてくれたのです。後で休憩時間にハーマンが「Hey, You. Sound Good, Man」と言ってくれて、その時からミュージシャン対ミュージシャンとしての、二人の交流が始まりました。 それから10年間のNY滞在中、僕はずっとハーマンの追っかけをしていました。時には、一週間の内4日間も同じライブハウスに通ったこともあります。しかし彼のレッスンを受けたことは一度もありませんでした。ただただ通い詰めることによって、僕は彼のソウルを少しずつ、我が身に染み込ませていきました。 僕が彼のプレイの中で最も影響を受けたのが、バラードの演奏です。彼のバラード演奏は、例えて言えば「女性を愛撫する様な」とても「エッチな」ピアノです。そのタッチは、まさに本物のSEXを超えると思われる程、微妙でツボを心得たものです。ある時、彼にそのことを言ったら「お前オレの秘密を知ったな!」と、冗談とも本気ともつかぬ言葉で切り返されてしまいました。そして爆発した時の凄まじさ。これも彼から学んだことです。自分をすべてさらけ出すことは、一面、自分の限界を示すことに他ならないから、表現者としては、とても恐ろしいことなのだけれど、ハーマンは、何の抵抗もなく、全人格を音として出し尽くしてしまいます。これってなかなか日本人には出来ないことだと思います。全部出して“勝負”ということを僕に教えてくれたのは、他ならぬハーマンのピアノだったのです。 ハーマンと僕との間のエピソードはたくさんあり過ぎて、とてもここには書き切れないけれど、最後に彼の墓参りをした時の話を……….。1999年5月、約一月前に亡くなったハーマンに、最後の別れを告げに、僕と彼の最後の妻ヒサヨさん、そして友人のドラマー、グレッグ・ビュフォードは、ニュージャージーの墓地を訪れました。まだ墓石もなかったけれど、墓守が教えてくれた、彼が埋まっているはずの場所の前で、彼と僕は共に愛飲していたワイルド・ターキーで、最後の酒盛りをしたのです。そして僕は彼の前で誓ったのです。「ハーマン、貴方の肉体は死んでしまったけど、そのソウルは、僕の中で生きてます。これから、貴方からもらった測り知れない感動を、後世の人々に伝えることで、貴方を生かし続けます。」 それ以来、演奏を通じてお客さんと一体感が持てた時、僕が感じた感動が伝わったと思えた時、僕は、ハーマンとの約束が果たせたことに満足すると共に、人間の営みの歴史の砂粒のひとつになれた事に、深い喜びが得られるのです。 (嶋津健一)
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Double Double Bass Session 発売日:2003.6.18 |
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マンネリは我慢できない。寡黙なピアニストが動き出した! | |||
Roving Spirits CD : RKCJ-2009 POS:4544873 02009 4 税込価格\2,625 税抜価格\2,500 発売会社:有限会社ローヴィング・スピリッツ 販売会社:スリーディーシステム株式会社 株式会社プライエイド・レコーズ |
【メンバー】 嶋津健一 (piano) Kenichi Shimazu 加藤真一 (bass) Shinnichi Kato 山下弘治 (bass) Koji Yamashita |
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【収録曲】 1.宙(そら)の音 Sora-no-Oto (嶋津健一) 4:22 2.黒ネコの理由(わけ) Blues For Pluto (加藤真一) 6:23 3.ベス・ユー・イズ・マイ・ウーマン・ナウ Bess You is My Woman Now (G.Gershwin) 8:53 4.ビコ Biko (加藤真一) 4:54 5.はるかなる山の呼び声 A Call of Far Away Hills (V.Young) 6:45 6.オールド・ダイアリー Old Diary (加藤真一) 4:37 7.ノーホェアーマン Nowhere Man (Lennon-McCartney) 5:25 8.イット・ネバー・エンタード・マイ・マインド It Never Entered My Mind (R.Rodgers) 6:49 9.ザ・デューク The Duke (D.Brubeck) 6:20 10.ジャンゴ Django (J.Lewis) 7:10 11.「呼応」より Music from "Ko-o" (嶋津健一) 3:20 Total Time 65:21 |
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【Credit】 Produced by 冨谷正博 Masahiro Tomitani Engineered by 高浪初郎 Hatsuro Takanami Assistant Engineered by 沖山 俊 Takashi Okiyama Recorded at BS &T 2003年3月3日、4日 Mastered by 澁澤 賢 Ken Shibusawa (P)(C) 2003 Roving Spirits Co.,Ltd. |
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【ライナーノーツ】 悠 雅彦、嶋津健一 嶋津健一/Double Double Bass Session 日本における現下のトップ・ピアニストとしての輝かしい実力や知的な魅力はいうに及ばず、嶋津健一ならではの創造的スピリットとたくましい挑戦意欲が実を結んだ待望の新作である。それと同時に、いやそれにも増して、嶋津のより本質的な音楽的賦質を身近に大写しさせることに成功した一点に絞っていえば、わけても彼の音楽に格別の関心を払ってきたファンにとっては、さらにこの音楽家の新たな魅力を発見しうる嬉しいニュー・アルバムといってもいいだろう。 本作は、嶋津健一のリーダー作としては、『ダブルス』(徳間ジャパン)、自主レーベルで発表した『トルネード&ヴォルケーノ』、そして『シンメトロフォビア』(ローヴィング・スピリッツ)に次ぐ第4作ということになる。彼が米国での活動に踏ん切りをつけて帰国したのは95年(6月)のことで、デビュー作の吹込が97年12月だったから、6年足らずの間に4作品を発表したことになる。音楽家にとっても厳しい状況の続く中、加えて帰国したばかりのゼロの状態から日本での活動を開始したことを考えれば、比較的順調に演奏作品を発表してきた方だろう。これは大切なことである。ライヴ演奏活動だけではミュージシャンの演奏や音楽を世のより多くの人々に聴いてもらうには限界があり、ごく一部のファンにしか支持されない不幸な状況を打破するためにはレコードを吹き込んで世に問うのがミュージシャンにとって欠かせない方法だからだ。電波や活字にも乗る機会が増え、それによって注目度も高くなり、知名度もあがる。さらに、この波を途切れさせない配慮も肝要だ。あれこれ考えれば、5年半で4作というコンスタントな吹込活動を心掛けてきたことが、嶋津を今日あらしめる大きな要素となったこと、つまり彼がピアニスト及び作曲家としての評価を高め、現在多くのジャズ・ファンから注目されるとともに大きな期待をかけられるまでになった裏に、そのつど重要な役割を果たした過去3枚のCDの存在があったことを決して軽視すべきではないだろう。彼が過去に発表したその3枚のレコードは、95年に帰国したのち、本格的活動に着手した97年以後の彼の歩みや音楽的展開の跡を物語ると同時に、音楽家としての彼の可能性を開発し、進化を促し、そして持前の創造的冒険心を触発する恰好のさまざまな機会を彼に提供することになった。今度の新作で彼が採用したダブル・ベースのアイディアも、こうした一連のプロセスから恐らくは必然的に生まれたものだろうと思う。 周知のように、嶋津は前作『シンメトロフォビア』ですでに、今回のダブル・ベース・トリオに先行する異色のトリオによる吹込に挑戦している。これが単なる思いつきで行った試みではなく、吹込に先立つ1年半ほど前からライヴハウス等で実践を繰り返しながら発展させてきたプロジェクトの1つの成果として、総仕上げ的に記録したものであることは、絵画や彫刻の作品群が展示されたアート・ギャラリー(スカイドア)において、これらの創作作品に触発されるユニークな環境のもとでライヴ録音された一事によって明らかだろう。この異色のトリオはピアノ、ベース、チェロからなる編成だったが、今回のピアノに2ベースというフォーマットのトリオがその一つの発展形であることと、そこには嶋津のそれぞれの楽器と自身の思い描くサウンドに対するこだわりが反映されているのを見てとることができる。たとえば、両フォーマットに共通するドラムレスの演奏スタイルは、演奏がある決まった方向に限定される危険性を回避しようとする嶋津の継続的な意図を表しているだろう。また、一方のベースにチェロが受け持っていた役割を付与することで、むしろそれまでの試みを活かしながら今回のダブル・ベース・セッションのグループ表現につなげていこうとする意図も汲み取れる。このダブル・ベース・トリオの2ベース採用の真意については嶋津自身のノーツに詳しいので重複を避けるが、ベースをホーン楽器同様のフロント・ラインに引き上げることで3者が同格で並び、3つのヴォイスが型にはまった役割分担を超えて対等に会話しあう想像性に富んだサウンド・スペースが実現したことは間違いない。それによって、日頃隠れて表に出てこないきらいのあるコントラバスの機能が大胆に発揮され、ソロにおいてもハーモニー面への貢献においても従来の型を破った躍動的な展開が果たされている。このフォーマットでも約2年前の2001年以来、月に1、2度のペースでこつこつとセッションを積み重ねてきた1つの確かな成果が具体的に実っていることはいうまでもなく、その意味では恐らく満を持しての吹込だったのではないだろうか。嶋津のベースに対する愛情とこだわり、並びに前作を含めて2000年以来嶋津とのコンビを深めてきた山下弘治、同じく嶋津が音楽監督をつとめたかなさし庸子の『クラウズ・イン・グリーン』をはじめ、近年嶋津との共演機会が多い加藤真一という、斯界屈指の実力を誇る2人の優れたベーシストの献身的なプレイが、このダブル・ベース・セッションを価値あるものにした(別項のそれぞれのプロフィールを参照して頂きたい。左のチャンネルが山下弘治、右が加藤真一である)。 また、この新作を通して“ウタ”ヘの嶋津の愛着が悪びれることなく豊かに発揮されたことも、思わぬ収穫であった。彼は滞米中にグロリア・リン及びジミー・スコットという偉大なシンガーの伴奏ピアニストをつとめてキャリアを磨いており、その間“歌うこと”について大きな示唆と刺戟を与えられたことは疑いない。だが多分、彼にはもともと“ウタ”に対する憧れとか思慕があったと思う。“歌うこと”への積極的な姿勢がこれほど色濃く出たのも、このツイン・ベース・フォーマットと2人のベーシストへの格別な信頼が基盤にあったからだろうが、“ウタ”やメロディーにこれほど思いの丈をこめた彼のプレイが集約的に記録されたのは多分初めてで、ファンにとってはまさに望外の喜びだった。レコーディングではリズミックな曲も演奏されたが、この収録を見合わせた裏に“ウタ”の特別な雰囲気を妨げたくない彼の思いが働いたのではないかと思う。 最後に、リアルで奥行きのあるベース、深々とした洗練性豊かなベーゼンドルファーの音の素晴らしさをも、ぜひご堪能頂きたい。 ’03年4月 悠 雅彦 |
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グループのコンセプト及び曲の解説。 私が何故、今回のような楽器編成のグループを思いついたかと言うと、まず第1に、ベースという楽器が好きだから、そして、ジャズにおけるベースの使われ方に、随分偏りがあるとの思いがあるためです。大部分のジャズの演奏において、ベースはピチカートで、四分音符を弾き続ける(ウォーキング・ベース)か、一定のパターンを繰り返すのみ、延々と伴奏をした後、やっと短いベース・ソロが回って来ます。まして、弓弾きにいたっては、バラードの最後に一音だけ弾かれる程度です。このグループにおいては「弓弾きをピチカート同様に重視する」「ベースを伴奏楽器としてのみならず、フロント楽器として機能させる」「3人の役割分担を固定せずに曲によりコンセプトを柔軟に変化させる」などに心がけてみました。 @は、友人の俳優、演出家の竹内晶子氏演出の同名の芝居のために私が書いた曲。2本のベース(山下メロディ、加藤サポート)の上に乗って、ピアノが漂い遊びます。「目の前にある世界に身をまかせてしまえば、音は宙から降りてくる」がその心。 Aは題名の通り、少しユーモラスな曲。ピアノと加藤のベースが、全曲を通して同時にアドリブを取ります。 Bは、オペラ「ポギーとベス」中の、印象的なアリア。ピアノと加藤の弓とが、ポーギーとベスを演じ分けます。 Cは、南アの黒人指導者スティーブン・ビコの伝記映画「遠い夜明け」に触発されて、加藤が書いたもの。ピアノは参加せず、ベース2本のみ(テーマのメロディは、ピチカート部分は加藤弓部分は山下、ソロは最初が山下、次が加藤)による演奏です。 Dは、西部劇映画「シェーン」の主題歌。加藤は参加せず、私と山下とのデュオです。 Eは、加藤の魅力がいっぱいつまったオリジナル。@同様2本のベース(加藤メロディ、山下サポート)に乗ってピアノが即興しますが、中程より山下が、パターンを離れて、それに絡みます。 Fは、ビートルズのレパートリーを加藤がアレンジしたもの。変拍子(6/4と4/4の混在)を使用し、ベースソロは、加藤によります。 Gは、私のアレンジ。原曲を知っている方は、メロディを一音変えてあるので奇異に思われるかも。山下の弓弾きをフィーチャーしています。 Hは、私と加藤のデュオ。簡単そうに聴こえるかも知れないけれど、知る人ぞ知る難曲です。 Iにおいては、普通アドリブには使用されない、頭のバラード部分のみを使ってみました。ソロは、加藤、山下、ピアノの順。 Jは、前述の竹内晶子氏との別のイベント「呼応〜命の投影」における、俳優竹内氏とのコラボレーションにおいて、舞台上で即興に出来た曲を、ほぼそのまま採譜したものです。メロディは山下、セカンドラインは加藤、アドリブなしのエピローグです。 なお配曲において、@〜Dを第1部、E〜Jを第2部となるように構成してみました。そんな聴きかたもしてみてください。 嶋津健一 |
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【プロフィール】 嶋津健一(ピアノ) 神奈川県横浜市出身。ヤマハ音楽教室ピアノ、音楽理論を学ぶ。東京大学工学部原子力工学科卒業。85年渡米、マンハッタン音楽院ジャズ科修士課程入学同時にニューヨークで演奏活動開始。マリアン・マクパートランド、ハロルド・ダンコ両氏に師事した後、修士課程卒業。グローリア・リン(Vo)のグループで 92年までレギュラーピアニストを務め、ジミー・スコット(Vo)のグループで94年までレギュラーピアニスト兼、音楽監督を務めた後95年帰国。 共演したミュージシャン ルー・ドナルドソン、ロン・カーター、マーク・ホイットフィールド、レイ・ドラモンド、ジミー・ポンダー、スコット・ハミルトン、ビリー・ハート、森山威男、原朋直、向井滋春、大坂昌彦、他 出演したジャズクラブ アポロ劇場、ボトムライン、ビレッジゲイト、サパークラブ、タバーン・オン・ザ・グリーン、コンドンズ、バードランド(以上ニューヨーク)ブルース・アレイ(ワシントン)、カテリーナズ(ロス・アンジェルス)、キーストン・コーナー(オークランド及び東京)、キンボールズ(サンフランシスコ)、ニューモーニング(パリ)、クイーン・エリザベス・ホール(ロンドン) 出演したジャズフェスティバル JVC、ジャズモービル、アトランタJF、ボストングローブJF、フォートデュポンJF、ピッツバーグJF、ニューワークJF(アメリカ)ニースJF(フランス)、ストックホルムJF(ストックホルム)、ウィーンJF(オーストリア)、モントリオールJF(カナダ) 出演したテレビ、映画 ツイン・ピークス(テレビ)、レイジ・イン・ハーレム(映画)、フルーツ・サンデー(NHK) ●リーダーアルバム Double・S(徳間ジャパン) Tornado&Volcano(ローヴィング・スピリッツ) Symmetrophobia(ローヴィング・スピリッツ) 加藤真一(ベース) 北海道空知郡出身。アン・ミュージックスクールで音楽理論とベースを鈴木淳氏に学ぶ。神戸のクラブでプロ生活スタート。同時にジャズに開眼。フリースタイルを含めたベースソロのライブを定期的に行う。札幌交響楽団首席奏者、藤沢光雄氏に師事。 85年猪俣猛トリオに抜擢される。その後大友義雄グループを中心に西直樹、遠藤律子、高橋知己、佐藤達哉、三好功郎、黒田京子らのグループはじめ多くのミュージシャンと共演、多種多様な音楽を演奏。92年永住権取得を機にニューヨークに移住。シーラ・ジョーダン、ヘレン・メリル、またアキラ・タナ率いるアジアン・アメリカン・ジャズ・アンサンブル、グレッグ・マーフィー・トリオ、アーニー・ローレンス・グループで演奏する。94年猪俣の率いるJJJASのツアーに参加、カーネギー・ホールで演奏。95年帰国。佐藤允彦、中川昌三、辛島文雄トリオ、96年木住野佳子トリオで全国ツアー。97年、猪俣猛でインドネシア、大山日出男カルテットで韓国ツアー。現在、佐藤允彦トリオ(Tipo CABEZA)、市川秀男トリオ、鈴木和郎トリオ、富樫雅彦(JJ Spirits)をはじめ、自己のグループ(B-HOT CREATIONS:田中信正、斉藤良、今年からヴォイスにNOBIEを加えさらにパワーアップ)で活動中。 ●リーダーアルバム You Can Touch My Heartstrings(自主制作) Something Close To Love(キング) Old Diary(サウンドヒルズ) Duet(佐藤允彦とのデュオ。独ナゲル・へイヤー2017)が全米全欧でリリースされ、国際的評価も得る。 山下弘治(ベース) 愛知県名古屋市生まれ。名古屋大学理学部地球科学科卒業。同大学在学中より、地元のライブハウスで活動を開始する。卒業後、椎名豊(p)トリオ&セクステットのレギュラーになり、彼の薦めで、93年「ジャズネットワークス」の一員として3作目「ブルーズンバラッズ」をニューヨークでレコーディング。その時のメンバーはロイ・ハーグローブ(tp)、ジョシュア・レッドマン(ts)、ジェシー・デイビス(as)、椎名豊(p)、大坂昌彦(ds)であった。94年上京、在名中にも親交のあった向井滋春(tb)のグループに参加、本格的にジャズベーシストとして活動。アコースティックベースの音色を生かした暖かなサウンド+ビッグトーンに加え堅実かつ大胆なプレイが高く評価される。96年NHKのラジオ、テレビ番組でハンク・ジョーンズと初共演。その時のプレイを認められ、以後97、99、00年と来日の度共演。00、02年にはスコット・ハミルトンと共演し好評を博す。国内では、00年に嶋津健一(p)、吉川よしひろ(cello)らとジャズの語法を用いながらも自由な発想で新たなサウンドを表現しようとトリオを結成、その後吉川から加藤真一(b)にメンバーが変わりツインベーストリオとして活動を継続、日本ジャズ界に一石を投じている。現在、大野雄二3、向井滋春G、大山日出男G、角田健一ビッグバンド、寺下誠3等で活動中。 ●レコーディング参加アルバム ブルーズ・ン・バラッズ ジ・アザー・デイ(BMGビクター)ジャズ・ネットワークス フォー・ミュージシャンズ・オンリー(キング)原 朋直 イーハトーブ(T・S・S・C・)寺下 誠 ジャズ新撰組(キング)ジャズ新撰組 Uh Huh(SONOKA)小池純子 Songs for Tired Lovers(キング)大橋美加 Symmetrophobia(ローヴィング・スピリッツ)嶋津健一 My Shining Hour(ジャズ・フリーク)平賀マリカ That Old Pieces(ローヴィング・スピリッツ)上山高史 Super C Brass(ジゾー)向井滋春 |
シンメトロフォビア - Live at SKYDOOR | ||||
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嶋津健一トリオ | Kenichi Shimazu Trio | ||
シンメトロフォビア - Live at SKYDOOR |
Symmetrophobia - Live at SKYDOOR |
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発売:Roving Spirits | 販売:3Dシステム | 2001年2月21日発売 | ||
CD番号:RKCJ-2001 | バーコード: 4544873 020018 | |||
Producer | 冨谷正博 & 嶋津健一 | Masahiro Tomitani Kenichi Shimazu |
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Jacket Design Director | 小川博史 | Hirofumi Ogawa | ||
Jacket Design | 早瀬芳文 | Yoshifumi Hayase | ||
Jacket Art | T・トラオ | T.TORAO | ||
Jacket Art | 菱山裕子 | Yuko Hishiyama | ||
録音場所 | SKYDOOR - Art Place Aoyama | SKYDOOR - Art Place Aoyama | 2000/8/3 | |
録音エンジニア | 金谷雄文 | Takefumi Kanaya | ||
編集スタジオ | Waver Sound | 2000/10/8 | ||
編集エンジニア | 金谷雄文 | Takefumi Kanaya | ||
マスタリング・スタジオ | CD DESIGN MASTERING | 2000/11/7 | ||
マスタリング・エンジニア | 山形一弘 | Kazuhiro Yamagata | ||
解説 | 悠 雅彦 | Masahiko Yu | ||
Piano | 嶋津健一 | Kenichi Shimazu | ||
Bass | 山下弘治 | Koji Yamashita | ||
Cello | 吉川よしひろ | Yoshihiro Kikkawa | ||
曲目 | ||||
1 | イントロダクション・ピアノ・ソロ | Introduction Piano Solo | Kenichi Shimazu | 3'57" |
2 | アフリカン・フラワー | African Flower | Duke Ellington | 7'06" |
3 | タンゲディア | Tanguedia | Astor Piazzolla | 9'57" |
4 | シンメトロフォビア | Symmetrophobia | Kenichi Shimazu | 9'01" |
5 | トルネイド&ヴォルケーノ | Tornado & Volcano | Kenichi Shimazu | 5'55" |
6 | オブリヴィオン | Oblivion | Astor Piazzolla | 8'58" |
7 | ホット・スポット | Hot Spot | Kenichi Shimazu | 8'19" |
8 | 組曲No.2 | Suite No.2 | Kenichi Shimazu | 8'17" |
9 | 竹田の子守唄 | Lullaby of Takeda | Traditional | 6'58" |
68'55" | ||||
この作品について (CDのライナーノーツから) <1>ポンニチジャズの追求(我がトリオの目指す世界) バンド用語で「ポンニチ」とは「日本」の事、単語の前後を置き換えるスラングです。ところがジャズ界では、ポンニチ転じて「日本人ぽい」⇒「本場アメリカ物と違う」⇒「要するにダサイ」と意味が変化してしまいました。つまり「あいつのサウンドはポンニチだよ。」イコール「あいつの音は日本人臭くてダサイよ。」という事になります。 ここで皆さん考えて下さい。日本人が日本人の音に対して、日本人的だと批評した時、それが軽蔑を意味するって、それとても恥かしい事じゃあありませんか。 ジャズでは、とてもユニバーサルな表現形態で、色々な衣を着せ替える事が出来ます。南米にはラテン・ジャズ、ヨーロッパにはヨーロピアン・ジャズ、アフリカにはアフリカン・ジャズ、各地方地方が個性を主張し、いまや誰も、それらを亜流だとか、偽物だとか、批難する人はいません。日本人ジャズ・ミュージシャンの演奏レベルは、かつてない程に高まり、それこそ世界のどこと比べても遜色ありません。今や日本人にしか作れないジャズ、ポンニチジャズを追求し、世に問うべき時が来ているのではないでしょうか。 <2>何をもってポンニチック(日本的)と呼ぶか ポンニチジャズと啖呵を切っては見たものの具体像が見えて来ません。当アルバムでは幾つかの試みを紹介できると思います。 A演歌的「泣き節」を使う(Oblivion、 Tanguedia) Bリズムの流動化(対称性の破壊 Symmetrophobia) C場の空気と一体化すること(禅に代表される日本人的境地) <3>当アルバムの場の空気(スカイドアさん、菱山裕子さん、T・トラオさんへの謝辞) さて難しい話はこの位にして、当アルバムに話を戻します。当アルバムは8月3日〜6日の四日間、青山のアートギャラリー「スカイドア・アートプレイス青山」において行われた、私の“4 Days Special”(4つの異ったフォーマットによる連続ライブ)の初日にライブ録音されたものです。当アルバム・ジャケットのデザインも担当して下さった、スカイドアの小川さんの好意により、各々のライブでは、スカイドアさんが、所有又は保管している作品を、日替りで展示させて下さいました。この日は菱山裕子さん、及びT・トラオさんの作品をお借りする事ができました。バンドのステージは、室のほぼ真ん中に設置し、ほぼ360度作品や観客に囲まれる形で作品と椅子を配置しました。 この場の空気が、われわれの演奏に限りないパワーを与えてくれたのです。以前から、様々な状況での演奏を経験して来ましたが、この日の場の空気の力は、それまで味わった事のないものでした。アルバム冒頭のソロピアノは、作品にインスパイアされての全くの即興ですし、三人の間のインタープレイも、これまでには体験した事のないハイ・レベルに達したと思います。 作品を提供して下さった、菱山さん、トラオさん、そして利益を度外視して本企画を進めて下さったスカイドア関係者御一同に、心から感謝の意を表して、この拙文の結びとさせて頂きます。 嶋津健一 |
その他の作品
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嶋津健一 スタン・ギルバート |
DOUBLE・S | 徳間ジャパン | TKCB-71280 | 1996 |
嶋津健一トリオ![]() |
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東京サウンド企画 | TSC・CD-2000 | 2000 |